ペン字の話
ペン字の目的 ―書道を習えば字がじょうずに書けるようになる?―

「書道」と「ペン字」はまったく別のものです。書道は芸術であり、 ペン字は実用です。 毛筆をペンに持ち替えただけでは、読みやすく美しいペン字は書けません。

一つ一つの文字がいくら芸術的に美しくても、読んでもらいたい相手が読めなかったり、読むのに苦労したりするのは、相手に対して礼を失しています。

ペン字の第一の目的は、ペンなど(硬筆)を用いて、読みやすく、読み間違いのない字を書くことです。 そして、行書を覚えれば、読みやすさを保ったまま、書くのに楽チンで、美しく、ちょっとおしゃれな印象を与えることもできます。

ペンの種類 ―ペン字には何を使って書く?―

ペン字のペンとは、正式には「硬筆」と呼ばれています。この硬筆とは、鉛筆、ボールペン(油性・水性)、万年筆、 サインペン、マジック、つけペン、筆ペン、など、毛筆以外の筆記具すべてを指します。ペン字を習い始めの頃は、 万年筆や水性ボールペンを使うのが良いと思います。昔はつけペンを使っていたようですが、利便性を考えて、 今はあまり使われなくなっています。つけペンを除いた中では、万年筆で書く線がもっとも美しいと言われています。

ペン字文字フォントと手書き文字 ―ワープロじゃダメなの?―

最近は手書きしたペン字を基に作られたペン字文字フォントのようなものも出てきました。このペン字文字フォントで書いた文面と、 手書きで書いた文面に違いはあるのでしょうか。

実は「おおあり」です。例えば手紙を見てみましょう。特に事務的なものでない限りは行書(楷書をくずした文字)を書くことが多いと思います。

縦書きでしたら、文字と文字の間を、あるときは多めにあけ、あるときはごく小さくする。ある文字は行の右に寄り、 またある文字は左に寄り、ゆらゆらと揺らぎながら、それでいて全体として行はまっすぐ進んでいく。 同じ文字が何度も出てくるようなら、いつも同じように書くのではなくて、あるときはこのくずし方、 またあるときは別のくずし方、と字の形を変える

こうしたことは、全体の文字の構成をみながら、書き手の感性で行なっていきます。だからこそ、手書きの文面はバリエーション豊かで、 表情が生まれてくるのです。この意味では一つとして同じものが書けないのです。

これに比べて、ワープロでは、いくら手書き風の文字フォントを使っても、いつも同じ文字が等間隔で並んでいるだけで、 表情に乏しいものしかできません。確かにワープロで書いた文字は読むために作られたものですから、読みやすいことは間違いありません。 しかし、手書き文字には、書き手の感性や感情が表われています。その意味で、ワープロ全盛の今、手書き文字には今までになかった 付加価値が加わっていると思います。

縦書きと横書き

日本語はもともと縦書きで書かれてきました。学校で字を習ったときを思い出してください。国語の時間は、 先生はいつも縦書きで黒板に字を書きますし、ノートも縦書き用ですし、教科書だって縦書きです。

ところが、今は横書きで書く機会も多く、国語以外の授業ではたいてい横書き、だから手紙も横書きという人も多いのです。 しかし国語で習った字を横に並べてみても、なんとなくパッとしない、読みにくいと思っている人はいませんか。

その原因は、国語で習った字が縦書き用の字だからです。縦書き用の字は、日本の字の歴史の中で縦書きしたときにもっとも読みやすく、 美しく見えるように改良され、脈々と受け継がれてきたものです。その文字をただ横に並べただけでは読みにくいこと、はなはだしいのです。

横書きするには、文字を横に並べていったときにもっとも読みやすく、美しく見えるような文字を書かなければなりません。 そこで、縦書き用の文字と横書き用の文字はきちんと書き分ける必要があります。

文字と同じくらい大事な「字配り」 ―字には自信があるのにどうして?―

世の中にはわざわざペン字を習わなくても、字をじょうずに書く人はたくさんいます。ところが、一つ一つの文字を見れば、 なるほどじょうずだなと思っても、全体としてあまりうまく見えないことがあります。

その原因は 字配り にあります。字をどんな大きさで、どの位置に、どんな行間で配置するか、それがうまくできていないと、 全体として「ヘタだな」と思われてしまいます。

ハガキなどへの字配りは、形式的に決まり事があります。その決まり事を守りさえすれば、たとえ同じように文字を書いても、 「うまさ感」は2割はアップします。ハガキの書き方については、 日常書式あれこれ マナー集 をご覧ください。